高校・高専・大学(院)などで構造力学の勉強をしていると、「この数式は実務でどう役立つの?」、「これ勉強して結局使うの?」と思って勉強に身が入らないことが一度はあると思います。

今回は、実務のどういった場面で構造力学が役立つのかを紹介します。

構造力学が実務で使われる場面

構造力学の必要性

土木工事では、コンクリートや鋼材(鉄筋・鉄骨)といった材料が多く使われます。

例えば、

  • 下水道工事では、ヒューム管と呼ばれる鉄筋コンクリート製の管
  • 法面工事では、吹付けコンクリートやグラウンドアンカー
  • 地下構造物擁壁工事では、鉄筋コンクリート構造
  • トンネル工事では、ロックボルト(アンカー)や覆工コンクリート

といったように、ほとんどの構造物でコンクリートや鋼材が使われています。

その理由は、土や水といった性質が不安定なものに対して、力学的に性質が分かっている材料で確実に抵抗するためです。

地盤や地下水は、

  • 強さにばらつきがある(締まっているのか、ゆるいのか など)
  • 時間や環境で状態が変わる(地下水位の高さ、砂質土なのか、粘性土なのか など)
  • 地震や豪雨で急激に条件が変化する(繰り返し揺さぶられる地盤内の粒子同士のかみ合わせが崩れることで、地盤の強さが一気に低下する。)

といった特徴があります。

一方、コンクリートや鋼材は、

  • 圧縮・引張・曲げに対する強さが分かっている(コンクリートは圧縮、鉄筋は引張・曲げに抵抗)
  • 計算によって安全性を評価できる(どこまで力が加わると壊れるかが数値として分かっているため)
  • 形状や寸法をコントロールできる

という特徴があり、設計によって安全性を確保しやすい材料です。

先ほどの例で考えると、

下水道工事では、地面の中に管を設置し、長期間にわたって確実に下水が流れる必要があります。そのため、ヒューム管(鉄筋コンクリート管)が土圧や地下水圧、地震時の力に抵抗する構造になっています。

法面工事では、雨や地震によって土砂が崩れ、道路や住宅に被害が出ないようにする必要があります。そこで、吹付けコンクリートやグラウンドアンカーによって斜面が動こうとする力に抵抗しています。

もし、これらの構造物の形状や厚さを経験や勘だけで決めていたとしたら、

地震で下水管が破損し、機能しなくなる → マンホールや家庭の排水溝から下水が逆流することによる悪臭

法面が崩壊して道路が寸断される → 近所のスーパーまで大回りしていかないといけない&う回路が激混みで大幅な時間ロス

といったことが、現実に起こり得ます。
実際、過去の災害では設計条件を超えた外力や、不十分な設計による被害も報告されています。

そのため、安全な土木構造物を造るには、構造力学を用いて、適切に設計・施工を行うことが重要です。

実務でどう使うのか

構造力学は、地面の重さ、地下水圧、地震などの外力に対して、構造物をどのような形状・厚さ・構造形式にすれば安全で合理的かを考えるための学問です。

構造力学では最初に、単純梁や両端固定梁などの「梁モデル」を学びます。

実際の構造物はもっと複雑ですが、現実の構造を単純なモデルに置き換えて考えるという考え方は、実務でもそのまま使われます。

「単純梁=実物そのもの」ではなく、「実構造を理解するための近似モデル」として使っている、という点が重要です。

建設コンサルタントの場合

建設コンサルタントの設計業務では、
構造計算ソフトを使って計算するのが一般的です。

そのため、操作だけ覚えれば計算結果は一応出てきますが、構造力学の考え方を理解していないと、その結果が本当に妥当なのか判断できません。

また、発注者から「なぜこの部材断面なのか」と聞かれたときに、計算結果の意味を論理的に説明する必要があります。

施工管理の場合

ゼネコンの施工管理では、足場、型枠支保工、仮設の土留め、路面覆工などで構造力学が使われます。

実際の計算は、足場材メーカーや山留材メーカーに依頼することが多いですが、その計算結果を確認するのは施工管理者の役割です。(なぜ設計図があるのに計算しなおすのかというと、設計図で想定されている部材と、実際に現場で使用する部材は必ずしも同一ではなく多少ずれが出るためです。これは、公正取引の観点から、設計図に「この会社のこの部材を使用してください」と明記することができないからです。しかし、メーカーやサブコンは、ゼネコンからの施工契約を獲得して自社の商品を使ってもらうために、設計図に特定の条件をつけてもらったり、独自の施工方法を設計に組み込んでもらえるよう建設コンサルタントに営業を行うこともあります。

構造力学の基礎知識がないと、構造計算書を見ても「どこをチェックすればいいのか分からない」という状態になってしまいます。(最悪、ゼネコン設計部に頼めば問題ないですが、会社によっては現場の社員だけで行わなければならないため、構造力学の理解は必須。一級土木施工管理技士の勉強だけでは構造計算書を読み取れないため、別で構造力学の勉強をする必要あり)。

工事では施工性確保のために、入札時の設計図面から変更することも多くあります。

例えば、立坑の土留支保工について、「この配置だと資機材が搬入できない」といった理由で、切梁や腹起しの構造を変更する場合です。

このような場合、変更案の妥当性を示すために構造計算結果を提出する必要があり、構造力学の理解が不可欠になります。

構造力学を勉強するときは、「試験のため」ではなく、最終的に実務でどう使われるのかをイメージしながら学ぶと理解が定着しやすくなります。

イメージをつかみたい人は、「土木設計 構造計算 型枠支保工」などで検索すると、実務的な計算事例を見ることができます。また、インターンや職場見学などで実際の構造計算書を見る機会があれば、構造力学の理解が一気に深まりますので積極的に活用していきましょう